女性活躍推進法について

近年の日本では、女性の社会進出に関するニュースをよく見ませんか?日本のジェンダーギャップが世界でよく話題になります。「専業主婦」という言葉も日本から流行しはじめたそうです。そのため、日本の政府が女性の社会進出への取り組みを進めて、2016年に女性活躍推進法が施行されました。今回は女性活躍推進法の背景、政府の視点、企業のメリットなどを解説します。

日本のジェンダーギャップは世界で120位、女性の管理職割合も低い

世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が2021年3月、「The Global Gender Gap Report 2021」を公表し、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)を発表しました。2021年の日本の総合スコアは0.656、順位は156か国中120位(前回は153か国中121位)でした。前回と比べて、スコア、順位ともに、ほぼ横ばいとなっており、先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となりました。

出典:男女共同参画局ホームページ(https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/202105_05.html

内閣府が公表した「男女共同参画白書 令和3年度版」によると就業者に占める女性の割合は,令和2(2020)年は44.5%である。諸外国と比較して大きな差はなく,欧米諸国よりは数%ポイント低いが、アジア諸国の中では比較的高い。

一方で管理的職業従事者に占める女性の割合について見ると13.3%であり,諸外国と比べると低い水準となっている。

女性が職業を持つことに対する意識について,平成4(1992)年からの変化を男女別に見ると,「子供が大きくなったら再び職業をもつ方がよい」の割合が男女ともに低下している。一方で,「子供ができても,ずっと職業を続ける方がよい」の割合が上昇している。

最新の調査となる内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(令和元年)では、「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」の割合が女性63.7%、男性58.0%であり、男女ともに6割前後まで上昇した。

上記のデータを見ると、女性が職業を持つことに対する人々の意識は、時代とともに変化してきています。しかしながら、キャリアアップについてはまだ改善が必要だと思います。

そのため政府も時代の変化に応じて、女性の社会進出のために法律を策定しました。例えば、1986年に男女雇用機会均等法が施行され、女性労働者が増加するとともに就業意識も向上していきました。

また、1999年より改正男女雇用機会均等法が施行されました。これにより募集・採用から退職に至るまでの、雇用管理のすべての段階における女性への差別的取扱いが禁止されました。

2016年には女性が社会で活躍しやすい環境をつくることを目的とした、女性活躍推進法が施行されました。次にこの法律と政府の取り組みについて説明します。

女性活躍推進法とは

女性活躍推進法は通称で、正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といいます。2016年に施行された10年間の時限立法で、「すべての女性が輝く社会づくり」の要となる法律です。(参考)首相官邸「すべての女性が輝く社会づくり本部

政府が求める視点

政府が求める女性の活躍を推進する視点として、次のようなものがあげられます。

○意識改革、働き方改革を行うこと

意識改革は、会社の経営者・管理職が女性社員の個性や能力を最大限発揮させるために、トップが先頭に立って正しい人事評価に反映させる取り組みです。

働き方改革は仕事と家庭生活を両立できる職場環境を実現するために行う必要があります。長時間労働を是正し、多様な働き方の構築を始めとする働き方の改革を進め、男女ともに働きやすい職場を目指します。

○男性の家庭生活への参加を促進すること

今まで、女性が育児や介護などの家庭生活を営みながら仕事をしてきて、結局両立するのが困難になって仕事を辞めることが多かったです。少子高齢化や共働き世帯の増加によって、男性も一緒に家事・育児・介護などの家庭生活を支えれば、女性の負担も減り職場での活躍も進むことが期待できます。

○キャリア形成できる仕組みを構築すること

女性は育児や介護のため長時間労働が困難になると、重要な仕事を経験できずキャリアアップや昇進も実現できなくなります。女性も男性も平等に育児や介護等をしながらキャリア形成を行い、両立できる支援制度を推進します。

女性の社会進出は企業にとってメリットがある

○優秀な人材を得られる

女性の中にも優秀な人材がたくさんいますが、家事や育児が忙しい、介護のため仕事を続けられないといった理由で、働く機会を失ってしまうことがあります。これでは今まで培った経験を活かせず、キャリア形成にも影響があります。会社も優秀な人材を失い、また再雇用や人材育成のコストも上昇するので、企業が女性活躍の仕組みを導入すれば人材を確保できます。

○職場に多様性が生まれる

企業によっては男性中心の職場もありますが、女性を採用することにより女性目線の新しい発想が生まれます。例えば商品開発する時に男性と女性の意見を交換すると、男女共に使える商品も作れるでしょう。

○社会からの好感度をアップできる

近年、SDGsやダイバーシティの推進などは日本企業にとって重要なミッションになっています。女性を雇用を推進すると、性別によらず社員を大切にする企業として社会からの認知度を向上できます。また、企業全体の信頼感が高まり、業績アップにも連動するでしょう。

○公的機関から優遇

厚生労働省による「えるぼし認定」企業や「くるみん認定」企業に認定マークが付与され、商品、広告などに付けることができます。これらの認定・特例認定を受けた企業には、税制優遇措置があります。

他には

  • 公共調達で有利になる
  • 日本政策金融公庫の低利融資を受けることができる
  • 両立支援等助成金が支給される

などのメリットがあります。

まとめ

日本のジェンダーギャップは先進国の中で順位が低く、日本での女性の社会進出における現状は世界と比べ遅れています。そのため、日本政府は女性活躍推進法を策定しました。

女性の社会進出は企業にとって、様々なメリットがありますが、女性のワークライフバランスを整える必要があります。企業が意識改革、働き方改革を行いつつ、男性の考え方や働き方を変える必要もあります。

これから、女性活躍推進法を基に、誰でも働きやすい職場環境を作っていきましょう。

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傅禕婷

傅禕婷

上海出身、東京都在住。上海の大学を卒業後、日系の広告代理店に9年間勤務。2015年に来日、結婚をきっかけに、家計管理を任された。その時から、日本の税制や保険などに興味を持ち始めた。 お金の知識を豊富にしたく、世の中の複雑な経済の仕組みを知りたいため、FP2級を取得。今後はFP1級やCFPも目指している。現在はインバンド業界に従事しながら、FPとしても活動中。