特別養護老人ホームに入居希望者が殺到するわけは?

「介護老人福祉施設」(特別養護老人ホーム)は、介護施設の中でももっとも入居希望者が多い施設です。
介護度の高い高齢者やその家族は、常に見守ってくれるスタッフのいる施設で安心して過ごせることを魅力に感じます。
また、施設の滞在期間が長期になる利用者にとっては、費用はなるべくおさえたいところ。
そこで今回は、特別養護老人ホームのサービス内容と利用料について解説します。
目次
費用の安さを求めるなら特養がおすすめ
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は通称「特養」と呼ばれ、常に介護を必要とする人が自宅の代わりとして暮らすことができる施設です。
日常生活全般の介助を受けられるのはもちろん、機能訓練もおこなえます。
24時間体制で、要介護度が高い方も安心して生活できます。
利用できる方は、新規では要介護3以上。
有料老人ホームのような入居一時金はなく、負担は月額費用のみ。
介護保険が適用され、自己負担額が比較的安い老人ホームです。
気になる費用は・・・
月々の利用料は、介護保険適用の「サービス費用の1割(所得が一定以上の第1号被保険者は2〜3割)」のほか、原則自己負担となる「食費」「居住費」「日常生活費」などがあります。
介護サービス費は要介護度に比例して高くなり、居室のタイプによって金額が異なります。
居室タイプ別ごとの介護サービス費(介護保険1割負担額)
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・1単位10円の場合の金額ですが、お住まいの地域によっては1単位の金額が変わります。
・特養入居条件は要介護3以上が原則ですが、特例で要介護1、2の方の入居が認められいるため、要介護1より記載しています。
「多床室」とは、1室に複数のベッドを配置しているタイプで、「従来型の個室」は1室1名利用するタイプです。
「ユニット型個室」とは、完全個室は従来型個室と同じですが、10人程度の利用者をひとつの単位(ユニット)として共同スペース(食堂やリビングなど)を備えた完全個室。
「ユニット型個室的多床室」とは、ユニットとして共同スペースを備えたものになりますが、個室部分が間仕切りなどで区切られ、完全個室とはなっていないタイプです。
食費と住居費には負担限度額がある
「食費」「居住費」は、国により基準費用額が決められていますが、実際は入所者と施設との契約により設定されます。
さらに、年金などの収入・資産(預貯金など)が一定以下の人に対して負担の上限額(自己負担額)が設けられ、それを超えた食費や居住費の負担額は介護保険から支給されます。
「日常生活費用」は、理美容代や医療費、病院までの交通費、日用品・嗜好品の購入代金、外部のレクリエーションの入場料などです。
これらは基本的に実費での負担になります。
そこで気になる「食費」と「居住費」の基準費用額と負担限度額は・・・
まず、収入や年金に応じて「第4段階(基準費用額)」「第3段階(2)」「第3段階(1)」「第2段階」「第1段階」にわけられます。
また、在宅で暮らす方や保険料を負担する方との公平性を高めるために、2021年8月から所得要件と資産要件の基準の見直しと食費の負担額が見直されました。
利用者負担段階と要件は次のように設定されています。
・第3段階(2):世帯全員が住民税非課税で、前年の合計所得金額と課税年金額が120万円超の方。預貯金などが500万円以下の方(夫婦で1,500万円以下の方)
・第3段階(1):世帯全員が住民税非課税で、前年の合計所得金額と課税年金額が80万円超120万円以下の方。預貯金などが500万円以下の方(夫婦で1,550万円以下の方)
・第2段階:世帯全員が住民税非課税で、前年の合計所得金額と課税年金額が80万円以下の方。預貯金などが650万円以下の方(夫婦で1,650万円以下の方)
・第1段階:生活保護受給者や世帯全員が住民税非課税の老齢福祉年金受給者。預貯金等が1,000万円以下の方(夫婦で1,000万円以下)
以上のような所得段階と部屋のタイプよって基準費用額と負担限度額は異なります。
特別養護老人ホームの食費と居住費の基準費用額と負担限度額(日額)
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食費の負担額は表のように変更になりました。

特養の1ヶ月の利用料は約12万円!
ここまで特養の月々の費用について細かく見てきましたが、「サービス費」と「食費」「居住費」「日常生活費」などの合計すると、いくらになるでしょうか。
生命保険文化センターが平成30年度におこなった「生命保険に関する全国実態調査」によると、施設で介護サービスを受けた場合の利用料は、平均11万8,000円となっています。
具体例を挙げると・・・
例)要介護3(1割負担)で所得区分が第4段階の方がユニット型(個室的多床室)に入所した場合のおおよその月額費用
(サービス加算と日常生活費の金額は一例です)
介護サービス費 :2万3,790円
介護サービス加算:1,500円
居住費:1,640円×30日=4万9,200円
食費:1,380円×30日=4万1,400円
日常生活費:1万円
総額は12万5,890円となります。
月々12万超と聞くと、割安だと言われている特養でも負担が大きいと感じる方もいるでしょう。
自己負担額が高額になった場合、「高額介護サービス費」「高額医療・高額介護合算療養費制度」といった軽減措置もあります。
所得の少ない方には軽減措置も
軽減制度は、月々、または年間の自己負担額の合計額が上限額を超えた場合、その超えた分が介護保険から支給されます。
支給を受けるためには、市区町村に申請することが必要になります。
1. 「高額介護サービス費」
1ヶ月の介護サービスの自己負担の合計額(福祉用具購入費などを除く)が一定額を超えると、超えた金額が市町村から払い戻されます。同じ世帯に複数のサービス利用者がいる場合には、世帯で合算できます。

2. 「高額医療・高額介護合算療養費制度」
毎年8月から翌年7月までの1年間の医療保険と介護保険の自己負担額を合算して、一定の限度額を超えた分が払い戻されます。
自己負担限度額を超えた金額は、医療保険、介護保険の比率に応じて両方の制度から給付されます。
(参考)
厚生労働省「高額介護合算療養費制度」
全国健康保険協会「高額療養費・70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費・高額介護合算療養費」
まとめ
今回は、入居希望者がもっとも多い「介護老人福祉施設」(特別養護老人ホーム)について解説しました。
特養は依然として人気があり、入居するには2〜3年以上かかると言われています。申し込んでもすぐに入居できるとは限りませんが、介護は長期戦です。
とりあえず申し込んでおいて、入居待ちの間は自宅での介護やショートステイ、グループホームなどほかの施設を利用する方も多いです。
まずは、地域包括支援センターか居宅介護支援センターに所属するケアマネージャーに相談し、利用者のニーズに合った施設を選ぶとよいでしょう。
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服部広子

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